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ギャラリートーク、写真、生き様

■新年度が始まって、なにやら忙しい。学生実験の指導をするのでそのためのミーティングだったり、就職活動をしているのでそれも当然忙しかったり。で、今日は教授と面接の練習、実験ミーティング、研究室の模様替えに追い回されていた。

■昨日は写真部のミーティング。そろそろ入学式も近いし、新入生勧誘はどうしようか、など。昨日は間抜けなことに財布を忘れてしまったので、部費も払えず、部会の後の食事も遠慮して帰ってきた。何をやってんだか。結局その後違う人と食べに行ったのだが。しかし、「不機嫌?」と聞かれてしまった。きっと財布を忘れたのが心苦しくて、それが変な態度に出てしまっただけなので気にしないでください、ほんと。

■本来なら今日写真の現像ができあがっているはずなのだが、残念ながら今日は忙しくて取りに行けそうにない。そういえば長々と引っ張ってしまったが、以下、写真の展覧会の感想。

□展覧会は師匠のYさん含めて6人。6X6の写真展なので、皆さん6x6なのは当たり前だとして、現像液から印画紙までデータとして書いてある。そして被写体も皆さんそれぞれ。Yさんは風景の中の人物をとってらっしゃるし、スタジオで人物のみを撮ってらっしゃる方もいるし、風景オンリーもいらっしゃった。皆さん味のある写真ばっかりだったのだが、これはお世辞抜きでYさんの写真が一番美しいと感じる。被写体もそうだし、画としてもやはりきれいだ。

□白黒の写真はコントラストがでていないとダメなそうだが、見たところコントラストがただきついだけでもダメだ。やはりそれは”画”としてバランスがとれていないといけないのだろう。

□ギャラリートークに居合わせることができたのだが、なかなかおもしろいお話を聞けた。スタジオで人物の写真を撮ってらした方は、最初の20枚か30枚は捨てコマだそうだ。モデルさんが緊張していい表情がとれないのだという。とり続けているうちになれてきて、それからが勝負なのだという。モデルさんは皆様つきあいが結構長い方らしいのだが、その人たちですら、だもんな。いかに人物のいい表情をとらえることが難しいかということだな。

□ギャラリートークの聴衆が、(写真を生涯学習などでやっている)キャリアが短い、(つまり初心者)の方だったということもあり、技術的な内容や込み入った話はなかった。(Yさんは「そんなちょろっとした撮り方で写真が撮れますか!」といっていたな。ちょっとおもしろかった。)で、最後にYさんのお話。

□彼は被写体にすると決めた人物とは非常に長い付き合いをされるそうで、3年通った、というモデルさんがいた。農家のおばあちゃんなのだが、これがまたいい表情で笑うのだ。彼が選ぶ被写体は、彼の『生き様』に共感してくれるか、またその被写体と向き合うことで『生き様』を考えられるか、というのが基準になっているという。Yさんは写真を撮るという行為を生き様まで延長させたのだ。

□ほかにもいくつか、聞いた話。離島に行ったときに木の下で海を見続ける老人に『休憩なさっているのですか?』と聞いたところ、違うといわれたそうだ。でもその数時間後にいってもまた座っていたので、今度は『何をされているのですか』と聞いたという。すると老人は『海をみている。あの岬に雲がかかったらしばらくしたら、雨だ。あの潮の色ならこういう魚が捕れる。そういうことが解る。』と答えられたそうだ。老人は元漁師で、今は船を下りて過ごされている。でもそういう情報を教えてあげるのだそうだ。Yさんは『失礼な質問をしてしまったな』と思ったという。

□田舎の小さな集落に行ったときのこと。老人ばかりが数人すんでいる、小さな村で、あるおばあさんと話したそうだ。少し小高い丘に家があるそのおばあさんに、『ここまであがってくるのは大変じゃないですか?』と聞いたという。おばあさんは『いやいや、そんなことよりも、私の家は、この集落で一番最初に朝日が拝めるんですよ。』と答えたそうだ。その姿は本当に誇らしそうだったらしく、Yさんも幸せというものについて考えたそうである。

■そんな話を聞いた後に改めて写真をみると、確かに美しい陰影のなかに美しい『生き様』のようなものが見えた、ような気がしたのだった。

by birdog_dd | 2006-04-05 19:10 | 平和な日々  

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